地球温暖化に伴う気候変動の影響により、世界では渇水リスクの増大が指摘され、日本においても、近年の降雨形態の変化により、ダムによる水の安定供給が危惧されています。渇水による社会的経済活動への影響を緩和し、水利用の安定性を確保するためには、水資源の有効利用等を計画的に推進するなど、需要側の対策を実施することが重要です。また、衛生管理が行われた水へのアクセスは、基本的な人権の一つであると捉えています。
こうした課題認識のもと、三菱地所グループでは、水資源の有効活用や水資源の保全において、各事業展開国の法令順守のみならず、SDGsを始めとした国際的な目標や、イニシアティブ、国際基準に沿って取り組みを進めていき、涵養に配慮した街づくりや、建物づくりおよび運用を行い、テナントの皆さま、共同事業者の皆さま、共に街づくりを行う地域の皆さまや行政と協働して効率的な水利用、削減に取り組んでいきます。
三菱地所グループの各社において「環境マネジメントシステム(EMS)」を構築し、水管理を含む環境活動について、目標管理・運用を行っています。
三菱地所グループの環境経営推進体制は、以下をご覧ください。
水に関するデータは以下をご覧ください。
三菱地所グループでは、事業形態に合わせた目標設定を行っています。例えば、三菱地所レジデンス(株)が供給する分譲マンション(ザ・パークハウスシリーズ)では、節水型便器や、節湯型のキッチン・洗面台水栓、シャワーなどを設置することなどを標準としています。
水に関するデータは以下をご覧ください。
三菱地所グループでは、世界資源研究所(WRI)が開発した評価ツールであるAqueduct(アキダクト)を用いて、国内外のSBT対象物件に対して、水ストレス・水リスクの評価を定期的に実施しています。
物件が位置する全ての地域は、Medium-high以上の水リスクレベルには該当していません。当面は水使用・排水等に係る大きな懸念はないと考えますが、各拠点の取水量・排水量・消費量およびリスクレベルについて、毎年度モニタリングを行っていく方針です。
リスクレベルがHigh, Extremely Highなど水ストレス・水リスクが高い地域において不動産開発・運営を行う場合は、地域環境に負荷が掛からないよう、水利用の効率化を図るとともに、社外のステークホルダーの方とも適宜協議・対話を行い、適切な水利用を行えるよう努めます。
水リスク評価結果については、以下をご覧ください。
皇居外苑濠では、水不足などを原因とした慢性的な水質悪化が進行しています。2015年11月に竣工した「大手門タワー・ENEOSビル」は、民間初の取り組みとして皇居外苑濠の水質改善に寄与する高速浄化施設を導入しており、年間約500,000m³の水を浄化することが可能です。また、濠の水位低下によって水がよどむのを避けるため、濠に最大で25mプール6杯分の水を供給する巨大な貯留槽も備えています。竣工以降、高速浄化施設の稼働によって濠の水質は徐々に改善しつつあります。
冷却塔のブロー水、テナントの厨房などの排水や雨水を処理した「中水」を、トイレの洗浄水や外構部の植栽散水用に再利用し、水資源の削減を進めています。
三菱地所(株)は東京都建設局と協働し、2010年度から、東京駅丸の内中央口から日比谷通りまでの「行幸通り」に丸ビルの中水を散水することで路面温度の上昇を抑えるヒートアイランド対策に取り組んでいます。散水した中水が気温の上昇に伴って気化していく過程で周囲の熱を奪い、路面温度の上昇を抑えることができます。
この取り組みにあたって、東京都建設局は、行幸通りの舗装の内部に水を蓄えることのできる保水材を詰めた「保水性舗装」を車道部に施工しました。また、三菱地所は、丸ビルの中水を路上に散水するための設備を設置しました。
中水(再生水)が作られる過程
(株)サンシャインシティでは、館内で使用された水道水(雑排水)を、バクテリアを用いた中水道システム(活性汚泥法)で浄化処理し再利用しています。
この再生システムで作られた水は上下水道の中間の「中水」と呼ばれ、サンシャインシティでは40年前の建設当初から導入しています。単独ビル用としては日本で初めての中水道システムとなるこの中水道プラントは、サンシャイン60ビルの地下3階にあり、トイレの手洗い水や、厨房排水、ホテルの浴室などの排水を1日最大約1,200トン再生しています。再生された「中水」はビル内のトイレの洗浄水に使用されています。