三菱地所グループでは、「三菱地所グループ環境基本方針」において「自然調和型社会形成への寄与」を定めており、事業活動を通じて生物多様性に与える影響を軽減・回避することに努め、自然と調和した魅力あふれる自然調和型社会を形成することを推進します。
また、生物多様性やエコシステムに配慮し、それらの保全、維持、拡大のため、世界遺産に指定されたエリアやIUCNでIからIVに指定されたエリアでの開発は行いません。生物多様性に影響を与えるような土地で開発を行う際は、行政やNGOなどの外部パートナーと協議し、適切な軽減策や修復活動を行います。
この方針に則り、グループ各社が事業活動の中で生物多様性への配慮を行っているほか、NPOなどの外部パートナーと協働した取り組みを推進しています。また、ABINC認証について、一定規模のまとまった緑地の確保が可能な物件における認証取得を推奨しています。
このような取り組みを通じ、ネットポジティブインパクトを達成するよう努めます。また、同様のネットポジティブに向けた取り組みを一次サプライヤー、及び一次サプライヤー以外にも要請し、バリューチェーン全体で目標達成に向け取り組みます。
生物多様性に配慮した開発の一環として、各種環境関連法令(森林法、公園法、自然環境保全法等)への対応を適切に行うべく、事業構想段階から行政等の外部関係者にヒアリングを行いながら事業を推進しています。
例えば、開発前に希少種の調査・特定保護を行い、必要に応じて移設、移設後の定期的なモニタリングおよび報告等を行政と協働して行っています。大規模開発等においては、環境影響評価法に基づき、周辺環境に与える影響の評価(環境アセスメント)の実施を行っています。
また、住宅事業を行う三菱地所レジデンス(株)では、物件規模・敷地面積の大小にかかわらず全ての「ザ・パークハウス」(三菱地所レジデンスの最も一般的な分譲マンションブランド名)において、生物多様性保全に配慮した植栽計画を取り組みとして、「BIO NET INITIATIVE」※を実施しています。実施にあたっては、生物多様性保全のための対応ガイドラインを作成し、大きく5つのアクションからなる行動指針に基づいて取り組んでいます。
例えば、「行政の定める特定外来生物や侵略的外来種などの侵略植物を採用しない」「計画地周辺における地域性植物を確認し、地域にあった植生を育む」「薬剤散布の機会をできるだけ減らすことで、ミミズやオケラなどへの影響を少なくするとともに、土壌の生命力を活かすことで植物の成長を促す」等の事項を行動指針に盛り込み、開発周辺地域の動植物の生息状況への影響を低減し、むしろ多様な生物の休息地となるような植栽整備を行うような計画としています。
このように、生物多様性への影響を低減し、加えて多様な生物が生息しやすい環境を整えることで、周辺地域の動植物の生息地の創出を含むネットポジティブインパクトを目指します。
アクション | 具体例 |
---|---|
① 守ること | ・行政の定める特定外来生物や侵略的外来種などの侵略植物を採用しない。 |
② 育てること | ・計画地周辺における地域性植物を確認し、地域にあった植生を育む。 ・日本の在来種を植栽の50%以上で採用する。 |
③ つなぐこと | ・地域の美しい並木の樹木や、その地域の在来種を多く採り入れることで、地域に飛来する鳥や蝶などの休息中継地の確保に貢献する。 |
④ 活かすこと | ・大きな枝打ち、強い剪定をできるだけ減らし、樹木の持つ自然な形を活かす。 ・薬剤散布の機会をできるだけ減らすことで、ミミズやオケラなどへの影響を小さくするとともに、土壌の生命力を活かすことで植物の成長を促す。 |
⑤ 減らすこと | ・低灌木・地被植物等を密植させたり、ウッドチップ等を土の表面に施し、土の露出を少なくすることで、雑草の発生を抑制し、除草管理コストを減らす。 |
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「BIO NET INITIATIVE(ビオ ネット イニシアティブ)」に関する取り組みは以下をご覧ください。
皇居外苑濠の水辺環境は、水質悪化により元来の水草類が自然発生できない状態が続いていました。そこで三菱地所(株)は、2017年10月に環境省と「皇居外苑の自然資源活用に関する協定」を締結し、2018年5月には、民間事業者として初めて、皇居外苑濠における水辺環境の改善と皇居外苑濠由来の希少な水草(絶滅危惧種)の復元、保全を目指した「濠プロジェクト」を立ち上げました。本プロジェクトは、環境省、(公財)日本自然保護協会、国立環境研究所気候変動適応センター(西廣淳室長)、千葉県立中央博物館などのNGOや専門機関と連携した取り組みです。
濠内から採取した動植物は、3つの活動拠点:①3×3 Lab Futureに展示された水槽、②当社が所有する大手町ビルの屋上に設けられたコンテナビオトープ、③「ホトリア広場」※に移植することで皇居の水辺環境の代替地として域外保全しています。
水草を移植した池にはベニイトトンボなどの希少なトンボも集まる他、2019年度には「東京都レッドリスト2010」において23区内では絶滅種とされる「ミゾハコベ」の復元にも成功する等、プロジェクト開始後、10種の水草の再生に成功しています。この10種のうち7種は、現在の皇居外苑濠では生息が確認できておらず、その多くが環境省や東京都のレッドリストに掲載されており、絶滅の危機に瀕しているものです。
また2019年より、濠プロジェクトにおいて皇居外苑濠から刈り取った水草「ヒシ(菱)」を堆肥化しています。この堆肥を用いて八ヶ岳で栽培された野菜を三菱地所グループが利用することで、新たな資源循環が生まれています。
濠プロジェクトでは、希少な動植物をはじめとした水辺環境の保全・復元を図り、お濠を中心としてつながる生物多様性のネットワークを構築することで、かつてこの地に広がっていた生態系の再生を目指すとともに、この活動をさらに魅力的な街づくりにも活かしていきます。
① 3×3 Lab Future(展示)
水質の良いお濠の環境を疑似的に再現した水槽で、再生に成功した水草などを育成しています。
② 大手町ビル屋上(発芽実験)
大容量の水槽を複数設置し、お濠から採取した泥に眠る水草の種の発芽実験や、水草の保全活動を行っています。
③ ホトリア広場(生態系への還元)
水草の発芽実験を行うとともに、広場内の池へ実際に水草を導入しています。導入した水草は、定着し、地域の生態系の回復に貢献しています。
三菱地所本社が入居する大手町パークビルと隣接する大手町タワー・ENEOSビルからなるホトリア街区の西側に位置する環境共生型の緑地広場「ホトリア広場」は、2023年10月、環境省による「自然共生サイト」の初回の認定地域に選定されました。
「自然共生サイト」は、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことで、認定区域は「OECM」として国際データベースに登録されます。
2022年12月に採択された生物多様性に関する世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、2030年グローバルターゲットには、日本が特に重視する30by30 (自然を回復軌道に乗せるため生物多様性の損失を止めて反転させるネイチャーポジティブの実現に向け、2030 年までに陸と海の 30%以上を保全区域とする目標)などが盛り込まれ、「自然共生サイト」は、30by30の目標達成に向けた取り組みです。
ホトリア広場は、生物多様性に配慮した管理を行うとともに、隣接する皇居外苑濠の豊かな自然と歴史的景観との調和を生み出しています。三菱地所は、(一社)大丸有環境共生型まちづくり推進協会(エコッツェリア協会)や専門家と連携して、お濠プロジェクトや生物調査や環境教育・定期的なネイチャープログラムの実施などを通じて、生物多様性の保全・復元、活用のための取り組みを継続、ネイチャーポジティブな社会の実現を目指します。
丸の内地区は、皇居やお濠、日比谷公園など、都心にあって豊かな生態系を残す貴重なスポットに隣接しているため、一年を通じて樹木や草花に加え、昆虫、鳥など多様な生き物を見ることができます。三菱地所(株)は、NPO法人生態教育センターと協働で、丸の内地区の生物モニタリング調査を2009年から継続的に実施し、さらに、その結果をまとめた「丸の内生きものハンドブック」を発行しています。同地区の豊かな自然を紹介するほか、個人でも身近でできる生物多様性保全を提案するなど、同地区の生態系の管理に向けたPDCAツールとして活用していくことを目指しています。
三菱地所(株)は、1958年竣工の「大手町ビル」の大規模リノベーション工事を2022年5月に完了し、約4,000m2の屋上空間「大手町ビルスカイラボ」をオープンし、新しい交流空間を創出しています。
「大手町ビルスカイラボ」は、リニューアル前は設備スペースとしての利用に限られていた空間に、緑豊かなワークスペース等のほか、都内最大規模となる屋上農園スペース「The Edible Park OTEMACHI by grow」(658m2、運営:プランティオ(株))を整備しました。
固定種・在来種といわれる「江戸伝統東京野菜」を中心に約40種類の野菜を土入れ段階からユーザー参加型で育てていきます。野菜育成アプリ「grow GO」により、野菜の生育状況等を把握できるほか、収穫時期にはアプリ利用者が収穫イベントに参加することができます。ビル就業者や来館者、食従事者らとの農と食を通じたサスティナブルな交流拠点になることを目指しています。
三菱地所(株)は、群馬県みなかみ町で、生物多様性の損失に歯止めをかけ、自然を回復させる「ネイチャーポジティブ」を目指して、2023年2月、当社、みなかみ町、公益財団法人日本自然保護協会の3者で、10年間の連携協定を締結しました。
主な取り組みとしては、生物多様性が劣化した人工林の自然林への転換や、里地里山の保全と再生、ニホンジカの低密度管理、生物多様性保全や自然の有する多面的機能の定量的評価への挑戦と活用があります。これらの取り組みを通してNbs(NaturebasedSolutions:自然に根ざした解決策)を実践しながら、生物多様性保全の定量評価にも挑戦します。関東圏の水源である利根川の源流部に位置するみなかみ町、その流域である丸の内エリアを中心に事業を営む当社、環境NGOとして生物多様性の保全に高い専門性を持ち全国で活動する日本自然保護協会が互いに密に連携し、企業・行政・NGOがそれぞれの知見を活かしながら、ネイチャーポジティブな社会の実現を目指します。
2024年7月には、「生物多様性保全や自然の有する多面的機能の定量的評価への挑戦と活用」の取り組みにおいて、生物多様性を客観的かつ定量的に評価する6つの手法を取り纏め、発表しました。6つの評価手法は、IUCN のアプローチやTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)による企業・団体への提言(以下、TNFD)など、世界的な動きとも整合を取りながら検討を進めてきました。結果、ネイチャーポジティブの実現に向けた国際目標である昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)や各自治体の目標に対する生物多様性保全活動の貢献を客観的に評価できるものになりました。また、TNFD で求められている企業による事業を通じた地域の自然への「依存度/影響」の評価や、「リスク/機会」「指標と目標」の検討及び開示に活用することもできます。
尚、本評価手法は主に生物多様性や生態系サービスの「現状」を評価する手法ですが、今後は保全活動等による「生物多様性の回復傾向」を客観的に評価できる手法の検討も進めていく予定です。
みなかみ町を舞台に実施した今回の評価結果について、以下NACS-Jのwebサイトをご覧ください。
「旧千葉村」周辺のスギの人工林
国有林で伐採したアカマツ
みなかみ町で撮影したニホンジカ
三菱地所レジデンス(株)は、(一社)いきもの共生事業推進協議会(ABINC)による「いきもの共生事業所®認証(ABINC認証)[集合住宅版]」を同認証制度の集合住宅版が始まった2014年度から、連続して取得しています。また、「ザ・パークハウス」(分譲マンションブランド)において生物多様性保全に配慮した植栽計画「BIO NET INITIATIVE(ビオネットイニシアチブ)」を2015年2月から導入しており、生物多様性保全への貢献度が特に高い物件でABINC認証【集合住宅版】の取得を目指しています。今後も生物多様性の保全と持続可能な利用のため、環境に配慮した街づくり・住まいづくりを実現します。
企業における生物多様性に配慮した緑地づくりや緑地の管理・利用などの取り組みを、「①生物多様性に貢献する環境づくり ②生物多様性に配慮した維持管理 ③コミュニケーション活動 ④その他の取り組み」の4つの観点から評価・認証するものです。具体的には、以下の18項目が評価基準として設けられています。
1生物多様性に貢献する面積の大きさ
2立体的な緑の量
3まとまりのある緑地づくり
4植生を支える土壌の厚み
5周辺環境との調和
6地域に根ざした植生の創出
7生物多様性保全に貢献する
質の高い屋上や壁面の緑地の創出
8動物の生息場所や移動経路に対する配慮
9使用する化学物質の種類・量の適切な管理
10水循環への配慮
11物質循環への配慮
12指標生物のモニタリング
13外来生物に対する対策
14管理者等の資格
15地域及び専門家との連携
16居住者・管理組合、住宅の管理
受託者の取り組み体制
17環境教育プログラムの推進
18地域の希少種の保全
ABINC認証の取得状況は以下をご覧ください。
ビーチ清掃の様子(下地島の海岸「ピサラブー」)
三菱地所(株)と三菱地所グループ会社である下地島エアポートマネジメント(株)は、宮古島エリアの豊かな自然環境を守るため、2018年7月より、宮古島市、公益財団法人日本自然保護協会、NPO法人宮古島 海の環境ネットワーク等の協力のもと、三菱地所グループ社員による環境保全活動に取り組んでいます。
当社グループは、地域経済の発展の推進とともに、同エリアの豊かな自然環境の保全にも貢献していきます。
(株)サンシャインシティが運営するサンシャイン水族館は、日本初の都市型高層水族館です。「天空のオアシス」をコンセプトに、空・光・水・緑を感じられるダイナミックな展示で、“生き物たちの本来の姿”が見られる工夫を凝らしています。1978年の開館以来、水族館が担う4つの役割(①環境教育、②レクリエーション、③調査研究、④種の保存)はもとより、来館者の皆さまに生物環境に興味、関心をもち“ココロ動かす、発見”をしていただくことに取り組んできました。2006年には沖縄県恩納村協力のもと、「サンゴプロジェクト」を発足し、「サンゴ返還プロジェクト」「サンゴ礁再生プロジェクト」という2つの取り組みを進めています。
豊かな海の象徴であるサンゴ礁は、温暖化の影響によるサンゴの白化現象などにより徐々に減少しています。サンゴの減少は、周辺海域の生態系が崩れ、生き物が棲めない海になるというリスクにもつながっています。沖縄県恩納村では、この状況を改善するため、1969年より漁業協同組合を中心にサンゴの保全活動を展開してきました。この活動に賛同したサンシャイン水族館は、恩納村産サンゴの常設展示を開始すると同時に、「サンゴ返還プロジェクト」として、恩納村のサンゴを一部お借りし、水族館の水槽で育て殖やしたサンゴを沖縄の海へ還しています。サンゴの一部を水族館で保管しているため、自然災害や環境悪化で恩納村海域のサンゴにダメージがあった場合でも、保管している恩納村産サンゴを用いて再生に繋げ、DNAを未来に繋げることができます。また、2014年からは、サンゴの卵子と精子が受精する有性生殖の方法を使った「サンゴ礁再生プロジェクト」も展開しており、サンゴ礁の再生を願ってこれからも活動を継続していきます。
「サンゴ返還プロジェクト」で返還したサンゴ
「サンゴ礁再生プロジェクト」で育成したサンゴの産卵