三菱地所グループでは、コンプライアンスを「法令の遵守」だけではなく、「社内ルールや企業倫理の遵守」と定義しています。三菱地所(株)の1997年の商法違反事件の反省に立ち、「三菱地所グループ基本使命」「三菱地所グループ行動憲章」を制定し、2005年の「大阪アメニティパーク(OAP)」の土壌・地下水問題の結果を重大かつ謙虚に受け止め2006年にこれらを刷新し、コンプライアンス経営を最優先課題として推進しています。また、国内外で事業領域を拡げ、社会的責任が高度化・国際化していく中で、グループ全体で共通の価値観・行動基準を共有するために「三菱地所グループ 行動指針」を2018年4月に改正し、役職員一人ひとりの日々の行動に落とし込んでいくことで真の企業価値向上を図っています。グループ全体での透明性の高い経営体制づくりとコンプライアンスの強化を通して、ステークホルダーとの信頼関係構築をめざし、法令遵守はもとより、基本使命「私たちはまちづくりを通じて社会に貢献します」の実践のため顧客や社会の期待に応えるよう努めるとともに、事業上のさまざまなリスクを理解し適切に対応していきます。
1. コンプライアンスの実践
私たちは、国内外の法令や社会規範に従い、企業倫理を確立しこれを順守するとともに、変化する社会の要請に応えます。
三菱地所(株)では、1997年の商法違反事件の反省に立った役職員の意識と組織の改革を原点とし、その後、2002年に「三菱地所グループ行動憲章」を改定して改革のための基本姿勢を明確にするとともに、全社で危機意識を共有して改革へとつなげました。2005年7月には「大阪アメニティパーク(OAP)」の土壌・地下水問題の反省からコンプライアンス体制を見直すことを目的に、社外有識者からなる「コンプライアンス特別委員会」を臨時に設置し、行動憲章の改正など、企業体質のさらなる改善に向けた取り組みを進めました。
2018年4月には事業領域の拡大と社会の要請の変化等を踏まえ、「三菱地所グループ行動指針」を改正し、さらなるコンプライアンスの実践に努めています。
コンプライアンス推進体制としては、三菱地所(株)執行役社長を委員長とし、各機能・事業グループおよびコーポレートスタッフの担当役員等をメンバーとして、三菱地所グループのコンプライアンスおよびリスクマネジメントに関する審議を行う「リスク・コンプライアンス委員会」、その事前協議機関として、部署長等が出席する「リスク・コンプライアンス協議会」を設置しています。さらに、コンプライアンス統括責任者としてコンプライアンスの総合的管理と推進業務を担当する「コンプライアンス担当役員」を取締役会決議によって任命するとともに、三菱地所(株)の各部署およびグループ会社はコンプライアンス推進事務局である三菱地所(株)の法務・コンプライアンス部と連携しながらコンプライアンス活動を推進しています。
コンプライアンス違反に対しては、グループ社員、派遣社員、パート社員、アルバイトからの相談や通報に対応するヘルプライン制度等による通常のレポートライン以外にも、三菱地所(株)の法務・コンプライアンス部への直接の相談報告フローを設けています。相談や通報内容に応じて調査、事実確認等を行い、職場環境の改善等を図っています。万が一、コンプライアンス違反の疑いがあった際は、必要に応じ懲罰委員会等を開催し適切に対処しています。また、重大なコンプライアンス違反が発生した際には、緊急事態対応マニュアルに即し対応しています。
グループ会社においてコンプライアンス違反等が発生した際は、三菱地所グループ経営規程に則り協議報告等の体制を構築しています。
グループ社員、派遣社員、パート社員、アルバイト等を対象に隔年にてグループ全役職員向けにコンプライアンスアンケートを実施し、定期的に三菱地所グループの基本使命・行動憲章・行動指針等の遵守状況に関する社内レビューを実施しています。また、行動憲章の理解を促すために行動指針を遵守することの表明として誓約を取得しています。
三菱地所(株)では、2004年10月、大阪のマンション、OAPレジデンスタワーの敷地の土壌汚染をお客さまに説明しないまま販売したことが宅地建物取引業法違反にあたるとして、家宅捜索を受けました(OAP問題)。
OAP問題は、2005年6月に不起訴処分となっておりますが、このOAP問題の反省を踏まえ、再発防止に向けたコンプライアンス体制のチェック、強化と改善に関する提言、ならびに企業体質の改善に関する提言をいただくことを目的に、麗澤大学国際経済学部の高教授を委員長とする社長直轄の「コンプライアンス特別委員会」を設置しました。
同年12月までの7回にわたる議論を踏まえ、翌年1月に報告書として「三菱地所グループ体質改善に関する提言~OAP問題を教訓として~」をまとめました。
三菱地所グループ体質改善に関する提言 OAP問題を教訓として(PDF 48KB)
以下は同委員会の概要です(所属、役職は当時のまま)。
OAP問題などを踏まえ、社外有識者の方から客観的な視点に基づいて、再発防止に向けたコンプライアンス体制のチェックと強化、改善の提言を行い、あわせて企業体質の改善に関する提言を行うことを目的とする。
社長直轄の諮問委員会
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] 北城 恪太郎 氏 [日本アイ・ビー・エム 株式会社 代表取締役会長、社団法人 経済同友会 代表幹事] 頃安 健司 氏 [弁護士 東京永和法律事務所、元大阪高等検察庁検事長] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] ※必要に応じて部門担当役員外が出席 |
2005年7月~12月(6カ月) 月1回程度の開催
企画管理本部CSR推進部
2005年7月15日(金) 15:00~16:40
三菱地所株式会社 本店会議室
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
コンプライアンス特別委員会の進め方について審議し、下記事項を成果物としてまとめることとしました。
また、本特別委員会の討議内容については要旨について公表していくこととしました。
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
2005年8月24日(木) 16:00~18:10
三菱地所株式会社 本店会議室
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] 北城 恪太郎 氏 [日本アイ・ビー・エム 株式会社 代表取締役会長、社団法人 経済同友会 代表幹事] 頃安 健司 氏 [弁護士 東京永和法律事務所、元大阪高等検察庁検事長] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
事務局より下記内容を委員宛説明し意見交換を行いました。
2005年9月27日(火) 13:00~16:00
三菱地所株式会社 本店会議室
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] 北城 恪太郎 氏 [日本アイ・ビー・エム 株式会社 代表取締役会長、社団法人 経済同友会 代表幹事] 頃安 健司 氏 [弁護士 東京永和法律事務所、元大阪高等検察庁検事長] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
事務局より下記内容を委員宛説明し意見交換を行いました。
2005年10月21日(金) 14:00~17:00
三菱地所株式会社 本店会議室
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] 北城 恪太郎 氏 [日本アイ・ビー・エム 株式会社 代表取締役会長、社団法人 経済同友会 代表幹事] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
事務局より下記内容を委員宛説明し意見交換を行いました。
2005年11月18日(金) 14:00~17:00
三菱地所株式会社 本店会議室
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] 北城 恪太郎 氏 [日本アイ・ビー・エム 株式会社 代表取締役会長、社団法人 経済同友会 代表幹事] 頃安 健司 氏 [弁護士 東京永和法律事務所、元大阪高等検察庁検事長] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
事務局より下記内容を委員宛説明し意見交換を行いました。
2005年12月22日(木) 15:00~18:00
東京銀行協会ビル内 会議室
委員長 | 高 巖氏 [麗澤大学 国際経済学部教授] |
委員(50音順) | 秋山 をね 氏 [株式会社 インテグレックス 代表取締役] 片山 登志子 氏 [弁護士 片山・黒木・平泉法律事務所] 北城 恪太郎 氏 [日本アイ・ビー・エム 株式会社 代表取締役会長、社団法人 経済同友会 代表幹事] 頃安 健司 氏 [弁護士 東京永和法律事務所、元大阪高等検察庁検事長] |
当社出席者 | 木村 惠司 [取締役社長] 飯塚 延幸 [副社長執行役員・コンプライアンス担当役員] 鈴木 誠一郎 [常務執行役員・CSR推進部担当] |
三菱地所グループでは、公正、透明で信頼を第一とした企業活動を行うことを宣言しており、グループ行動指針の中で、政治や行政との癒着が疑われる行為、違法行為はもちろんのこと、社会通念を逸脱した接待・贈答等を禁止しています。
政党や政治団体の活動に関わる支援を行う場合は、政治資金規正法、公職選挙法等の関係法令、「三菱地所グループ行動指針」等の内部規則に照らして適切な対応を行っています。
また、組織的に贈収賄防止に取り組む体制を整備し、2013年には「三菱地所グループ贈収賄防止基本規程」を制定し、2018年には「三菱地所グループ贈収賄防止指針」を制定・公表しています。「贈収賄防止指針」には取引先へのお願いを明文化しており、取引先の皆さまのご協力のもとに、サプライチェーン全体でのコンプライアンス徹底を図っていきます。
腐敗防止を含むコンプライアンスに関する相談・連絡窓口としてヘルプラインを設置するとともに、取引先に対しては、専用ヘルプラインを設け、グループ各社の取引先からの相談や通報を受け付けています。
個々の契約については、契約ごとに贈賄リスクを評価の上、リスクの高い取引の相手先に対するデューデリジェンスを義務づける「贈賄リスクアセスメントおよび贈賄デューデリジェンスに関する細則」を制定・運用しています。贈収賄防止体制全般に関しては、2017年に、外部機関によるアセスメントを実施しました。これにより抽出された課題に対応していくことで、一層の贈収賄防止体制強化を図っています。
贈収賄防止体制の運用状況については、リスク・コンプライアンス委員会で必要に応じてモニタリングを実施することとしており、さらにリスク・コンプライアンス委員会でのモニタリング状況を取締役会にも報告しています。また、贈収賄防止体制の有効性を維持・継続するために、必要に応じて内部監査を行い、贈収賄防止管理体制の評価・見直しを行っています。
贈収賄防止に関するグループ役職員への研修と、グループ役職員からの「贈収賄防止指針」への誓約取得を実施しています。また、海外事業に関係する部署・グループ会社向けに、毎年贈収賄防止講演会を開催し、贈収賄防止関連規程の浸透を図っています。
2023年度、腐敗に関する罰金、罰則等の適用はありませんでした。
腐敗行為に関する法令違反の状況については以下をご覧ください。
三菱地所グループでは、反社会的勢力との一切の関係遮断を「行動指針」に明記しています。また、三菱地所(株)法務・コンプライアンス部を専門部署として、反社会的勢力から接触があった場合には、必要に応じ警察と連携しながら、グループ全体で毅然とした対応を行っています。
三菱地所グループでは、コンプライアンスに関する相談・連絡窓口として「ヘルプライン」を設置しています。役職員は、ハラスメント、職場の人間関係に関する相談、労務関係、贈収賄を含めた法令違反など、コンプライアンスに関して改善すべきと思われることやコンプライアンス違反の疑いがあることについて、ヘルプラインに相談することができます。グループ社員、派遣社員、パート社員、アルバイトも利用できます。2018年に三菱地所グループヘルプライン相談窓口を変更し外部機関に一本化したことで、平日夜間・休日も電話対応が可能な体制となりました。また、2022年より、海外の子会社に所属する役職員等を対象とした「グローバルヘルプライン」も開設し、現地の言語や法令等にも対応しています。ヘルプラインの周知を図るため、コンプライアンス通信への掲載、ポスターの掲示を行っています。受け付けた相談については内容に応じて調査や事実確認等を行ったうえで適切な対応を行い、職場環境の改善等を図っています。
ヘルプライン通報件数については以下をご覧ください。
ESGデータ>G:ガバナンスデータ>(2)その他数値データ>②リスク・コンプライアンス関連
グループ各社においても個社毎にヘルプラインを設けており、定期的に集計等を行い傾向等の確認をしています。
また別途、取引先に対しては、専用ヘルプラインを設け、グループ各社の取引先からのコンプライアンスに関する相談や通報等を受け付けています。
コンプライアンス違反があった場合は、違反内容に応じて違反行為に対する懲戒処分を行います。
コンプライアンスの重大な違反の件数については以下をご覧ください。
2018年4月に三菱地所グループ行動指針を改正したことに伴い、教育ツールであるコンプライアンスガイドブックを刷新して発行しました。三菱地所グループが大切に思う5つの価値観についてイラストやQ&Aを多用してわかりやすく説明しています。グループ全役職員に配布し、コンプライアンスの周知・浸透のためのツールとして役立てています。
三菱地所グループでは、新入社員研修や新任基幹職研修など、さまざまな機会で役職員のリスクマネジメント・コンプライアンス意識の向上を目的とした研修を実施しています。
特に新入社員研修では、主なグループ会社の新入社員向けに、行動憲章やコンプライアンスの基礎などについて共通で学ぶ研修を実施しています。
三菱地所(株)では新任総合職2級研修、新任基幹職研修時にコンプライアンス研修を、また、社外取締役含む全役職員を対象にリスクマネジメントやコンプライアンスに関するeラーニング研修を行っています。
リスク・コンプライアンスe-ラーニング受講率については以下をご覧ください。
三菱地所(株)では、グループ会社を含めた経営層、幹部社員を対象として「リスク・コンプライアンス講演会」を開催しています。テーマは、リスク・コンプライアンスのジャンルからその年の社会情勢に応じて選定しています。
三菱地所グループでは、社員のコンプライアンス意識の浸透度や問題意識などを継続的に調査するために、役員・社員・派遣社員・アルバイト等を対象に、隔年でコンプライアンスアンケートを実施しています。アンケート結果については、全体傾向と事業グループ、グループ会社ごとの特徴を分析したうえで、経営層に報告するとともに各職場へフィードバックし、コンプライアンス体制の維持・強化に役立てています。
社員一人ひとりがコンプライアンス・リスク管理の意識を持ち、三菱地所グループの一員として誠実な行動ができるよう、人事評価において、コンプライアンス及びリスク管理に関する評価軸を盛り込んでいます。具体的には、三菱三綱領や三菱地所グループ行動憲章等に則り、コンプライアンス意識を持って行動をしているか、リスクの特定・回避、再発防止等を行っているか、などの達成水準が役職・等級ごとに定義され、全社員を対象として年度に一度、達成状況に関する評価がなされ、昇給等にも考慮がされます。
このような人事評価を通じて、社員一人ひとりが、三菱地所グループの一員としての意識・自覚を強め、公正で透明な行動を行うことで、多くのステークホルダーの方々の信頼を獲得できるよう努めてまいります。